タイの労務管理について

タイ残業の上限や休憩時間は?|法律の観点から徹底解説

タイの法律

日本の会社がタイ人を雇用する場合、労使関係で揉めるケースが多く見られます。その多くは、雇用契約が無い、就業規則がない状態でタイ人労働者が会社を訴えるというものです。

特に日系企業の場合、タイ人は日本人よりも自己主張をしてくることを念頭に入れなければ痛い目に合います。今回はタイの労働法に定められている各規定について解説しますので、参考にしてください。

タイの残業等の規定を定めている法律

タイの残業時間や休憩時間、労働日数などはタイの労働者保護法によって定められています。この法律は1998年に制定され、日本の労働基準法とよく似た構成・内容となっています。

この法律では、10名以上の従業員を雇用している雇用主は、少なくとも労働者保護法で定める勤務規則(勤務時間、休暇、残業、賃金支払、懲戒処分、解雇、解雇金等)を含む就業規則を作成し、従業員に対して掲示することが義務付けられています。

また、この就業規則を提示する際は、1998年労働者保護法に規定の法定記載事項を必ず盛り込まなければならず、タイ語に翻訳する場合は、記載されている専門用語と法律用語を同じになるように記載しなければなりません。

このように、タイの労働者保護法は提示するまでに準備が必要です。

タイにおける労働時間・残業の目安

タイにおける労働時間や残業代の目安は、上記の労働者保護法に記載されています。

労働時間に関しては、1日の労働時間が8時間を超えた場合、時間外労働となります。

時間当たり賃金の1.5~3倍の残業手当が義務付けられており、平日の残業費は1.5倍、休日の勤務費は2.0倍、休日の残業費は3.0倍となっています。

ただし、タイの労働者保護法でも、日本と同じように一定の範囲の管理職について時間外労働、休日労働は賃金を払う必要がないと規定されています。どの職級から管理者なのかという規定はないため、トラブルを防ぐためにも使用者側で明確にしておく必要があります。

また、時間外労働については、以下の3点に注意する必要があります。

①時間外労働の場合、原則として、事前に労働者の承諾を得なければなりません。ただし、 ホテル、劇場、運輸、飲食店、カフェ、クラブ、教会、病院では、例外として使用者が労働者を休日労働させることができます。危険有害業務については、通常の労働時間を超えて労働者を使用してはいけません。

②妊娠中の労働者および18歳未満の従業員には、本人の承諾があったとしても、時間外労働、休日労働、深夜労働(22:00~6:00)をさせることはできません。ただし、管理職、財務および会計等の職に就いている女性については、例外として適用が除外されます。

③週労働時間が48時間を超えていない場合は、時間外手当を支払うことなく1日8時間を超えて労働させることができます。

タイにおける労働時間の上限

所定労働時間としては、原則として1日の就業時間は8時間以内、1週間の総労働時間は48時間以内と決められています。

ただし、政府規則に規定された労働者の健康と安全を脅かす可能性のある作業(危険有害業務)の場合、1日の就業時間は7時間を超えてはならず、1週間の総労働時間は42時間を超えてはなりません。

タイにおける労働者の休憩時間・休日を解説

タイの法律では、労働者の休憩時間を1日1時間以上取らせなければなりません。また、他にも以下のように細かな規定があります。

①毎日の休憩時間は、1日に最低1時間を始業から5時間以内に与えなければなりません。また、2時間以上の時間外労働を行う場合には、時間外労働開始前に、前記の最低1時間の休憩とは別に、さらに20分間の休憩を与えなければなりません

②飲食店で働く労働者には、上記の休憩時間の原則が適用されません。飲食店で働く労働者は、休憩時間が2時間以上であっても、その超えた時間は労働時間とみなされない決まりとなっています。

③18歳未満の年少労働者については、労働者保護法第46条により、就労開始から4時間を越えた次第、1時間以上連続して休憩時間を与えなければなりません。

次に、休日についてですが、労働者保護法で定められた以下の規定を知っておく必要があります。

①1年間継続して勤務した従業員は1年当たり6日以上の年次有給休暇を取ることができる

②勤務期間が1年未満の従業員であっても、使用者は従業員の勤務日数に基づく比例計算により年次有給休暇を決定することができます。

③労働者は年間上限30日までの日数で医療休暇を取ることができます。

④労働者は医師が定めた期間不妊手術休暇を取ることができます。

⑤労働者は雇用契約で認められた自己都合のための休暇を取ることができます。通常は規定により無給です。

⑥労働者は、規定による教育および能力開発のための休暇を取ることができます。

⑦労働者は、有給休暇は年間最長60日間まで、軍事訓練招集のための休暇を取ることができます。

⑧労働者は、産休は年間90日間(休日を含む)取ることができ、そのうちの45日間は有給となります。

⑨18歳未満の年少労働者は、労働省が承認した教育機関などでの会議やセミナーに参加する権利があり、そのための休暇については1年に30日を超えない期間については労働日の賃金と同額を支払わなければなりません。

タイにおける残業まとめ

タイの残業や休暇などはほぼ全て労働者保護法による規定によるものであり、労働者は手厚く保護されています。

また、これら規定の遵守と同時に、就業規則の提示も義務付けられており、タイ人との労使契約には様々な知識が求められます。

今回ご紹介した残業、労働時間、休憩時間などの規定をしっかりと確認し、後々トラブルにならないようにしっかりと手続きを進めていきましょう。

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